僕の心を温める本

今週のお題「心に残った本」
僕が今までに読んだ本の中で最も多く読み返しているのが、市川拓司さん著の「その時は彼によろしく」という小説です。

そのときは彼によろしく (小学館文庫)

そのときは彼によろしく (小学館文庫)

市川拓司さんといえば「いま、会いにゆきます」(2003年,小学館)の印象が強いかもしれませんが、こちらの小説も、自分にとってはとても強烈な感動を与えてくれた物語の一つとなっています。


主人公である智史は、水棲動物や水辺の植物が大好きな、ちょっと気弱で心根の優しい男の子。彼は中学2年生のある日、三人の友人と出会います。極度の近眼で不相応に大きい黒縁めがねをかけ、毎日ゴミの絵を描き続ける少年、佑司。美しい容姿とは裏腹に、それを隠すように少年のような服装をまとう少女、花梨。そしてゴミ捨て場に住み、「ヒューウィック?」と鳴くムク犬、トラッシュ。彼ら四人(三人と一匹)は出会った日から毎日、放課後にいつものゴミ捨て場に集まり、時間を共にしていきます。

三人はそれぞれに様々な事情を抱えていて、そのために時に傷つき、苦悩します。それを皆で分かち合うようにしながら、彼らは成長していきます。


時が流れ、彼らが大人になっても、彼らはそれぞれの場所で、互いに過去を忘れられぬまま、自分たちの日々を送っていきます。彼らの少年時代が、大人になった今でも彼らを結び付けていたのです。


そして再び彼らが交わった時、いくつかの出会いと、いくつかの別れが訪れます。その時に、表題である「その時は彼によろしく」という言葉が、強烈なメッセージとなって心に突き刺さります。


僕はこの本を読み、とても深い愛を感じました。それぞれが互いに想う気持ちや、愛する者への溢れるほどの愛が、とても鮮烈に、自然な形で描き出されています。いつか自分も守るべきものを持ち、それに本当に向き合う覚悟ができた時には、心の底から限りない愛情を注ぎたい。そう思わせてくれた小説です。

機会があれば是非、多くの方に読んで頂きたい小説です。